病院指標
医療の質指標

当院は、かかりつけ医の先生方と共同で診療を行う開放型病院であり、また、地域医療支援病院として、幅広い年齢層の患者さんに、紹介患者さんに対する医療と救急医療の提供を行っています。年齢層においては、60歳以上の占める割合が全体の52.9%となっており、疾患別にみると消化器疾患、呼吸器疾患、次いで循環器疾患となっています。また、小児救急医療拠点病院として24時間365日、小児科医師による診療を行っていますので、10歳未満の占める割合も全体の27.9%となっています。

小児科では食物アレルギー負荷試験の検査入院が多く、続いて気管支炎、肺炎、喘息、上気道炎といった呼吸器系疾患の症例が上位を占めています。当院は2019年に熊本県アレルギー疾患医療連携病院に認定されたことを機に、アレルギー診療センターを設立し、アレルギーの診療および人材育成に力を入れています。また、小児救急医療拠点病院として24時間365日、小児科医師による診療を行っており、急性疾患の短期入院が多くを占めています。長期治療を要する疾患児や慢性疾患児は、患児にとってより相応しい他病院の小児科と連携して診療を行っています。

消化器内科では小腸大腸の良性疾患(大腸ポリープなど)、胆管結石、胆管炎等の胆道疾患の症例が多く、内視鏡的に治療しています。当院の内視鏡室は、専門的な内視鏡技師・看護師を配置しESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)をはじめ、先進的な取り組みを行っており、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)やEUS(超音波内視鏡)等による治療も充実しています。当院は夜間休日診療を行っており、大腸憩室(大腸の壁が袋状に外に飛び出すくぼみ)のある方で、腹痛や発熱をきたす大腸憩室炎や大腸憩室出血、腸管の内容物が詰まって流れなくなる腸閉塞が上位を占めています。消化器がんも診断から内視鏡治療、抗がん剤化学療法、緩和医療まで、高度な治療に取り組んでおり、肝臓がんの入院治療で肝動脈塞栓術(TACE)、早期胃がんの入院治療で内視鏡的粘膜切除術 (EMR・ESD) も多く行っています。

外科の患者数は、胆石症や胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術が最も多く、次いで15歳以上の鼠径ヘルニア手術、急性虫垂炎の緊急手術、結腸直腸(虫垂を含む)の悪性腫瘍に対する手術、の順となっています。熊本県指定がん診療連携拠点病院として、外科では悪性腫瘍に対する集学的な治療を行っており、手術だけではなく、化学療法なども積極的に行っています。

呼吸器内科では、呼吸器疾患全般にわたる診療を行っています。症例数として肺炎、喘息症例が多くなっています。また高齢者に特有の誤嚥性肺炎が多く、患者さんの平均年齢は85歳を超えています。また肺胞の壁に炎症が起こり、壁が厚く硬くなり、肺の膨らみが悪くなる間質性肺炎の症例も多くなっています。高齢者は合併症も多く難治化しやすいため、入院期間も長くなる傾向にあります。肺の悪性腫瘍に対する治療も精力的に行っており、症例数としては抗がん剤化学療法が多く、内視鏡治療(気管支鏡など)も積極的に行っています。

循環器内科では、睡眠時無呼吸の検査入院症例が多く、外来でスクリーニングを行った後、無呼吸が疑われる患者さんについては、1泊で終夜睡眠ポリグラフィーを行っています。次いで人口の高齢化に伴う高齢者の心不全症例が多くなっています。高齢者心不全は種々の心疾患を背景に、多くの問題を抱えているため、他診療科と連携しながら入院管理を行っています。徐脈性不整脈(洞不全症候群や完全房室ブロック等)の治療においては、ペースメーカー移植術を行い、調律の異常を補正します。また高齢者心不全の診療を行う中で、誤嚥性肺炎、市中肺炎を併発して入院治療を必要とする症例も多くなっています。厚生労働省の集計条件に基づき、患者数が10未満の場合は「-」の表示としています。

糖尿病代謝内科では、糖尿病全般、内科系甲状腺疾患、動脈硬化性代謝疾患を中心に診療を行っています。症例数としては、糖尿病の教育入院や、糖尿病の合併症(神経障害、網膜症、腎症、ケトアシドーシス(高血糖性の急性代謝失調))に伴う入院が多くなっています。厚生労働省の集計条件に基づき、患者数が10未満の場合は「-」の表示としています。

皮膚科では、蜂窩織炎の症例数が多くなっています。皮膚腫瘍に対しては入院・外来での日帰り手術を行っています。

当院は、熊本県より県指定がん診療連携拠点病院の指定を受け、診断から治療までクオリティーの高い医療提供を行うとともに、紹介型医療機関として他医療機関(地元の開業医)と連携した診療を行うためのツールである「私のカルテ」、また2015年より医療連携システム「熊本リージョナルネット」の運用を開始し連携をより強化しています。2003年12月に外来化学療法室、2013年5月腹腔鏡手術センターを設立し、Stage ⅠからStage Ⅳの進行度に応じた内視鏡治療、手術、抗がん剤化学療法、生活の質を考慮した医療に努め、緩和医療を含めた全人的な医療を目指しています。クオリティマネージメントセンターでは、患者さん、患者さんを支えるご家族の心理的・社会的・経済的な生活状の様々な相談に対し専門的視点に応じて他部門と連携・協働し支援しています。厚生労働省の集計条件に基づき、患者数が10未満の場合は「-」の表示としています。

市中肺炎とは、普段の日常生活の中でかかる肺炎のことです。全体で見ると「中等症」が全体の約6割を占めており、平均年齢は80歳前後の高齢者となっています。肺炎は高齢になるほど重症化しやすく、平均在院日数も長くなる傾向にあります。当院では呼吸器内科で肺炎の治療を行っており、併存する別疾患があれば、各診療科と連携し治療を行っています。厚生労働省の集計条件に基づき、患者数が10未満の場合は「-」の表示としています。

厚生労働省の集計条件に基づき、患者数が10未満の場合は「-」の表示としています。

当院では年間約800例以上の外科手術を行っており、術式では腹腔鏡下胆嚢摘出術を最も多く行っています。胆嚢結石症、急性胆嚢炎等の疾患での手術で、入院期間は概ね9日間となっています。次いで鼠径ヘルニア手術の症例が多く、小児と成人の幅広い年齢層で手術を行っており、およそ2割の症例が10歳未満です。次に多いのは腹腔鏡下虫垂切除術で、ほとんどが緊急手術となっており、鼠径ヘルニア手術同様、幅広い年齢層で手術を実施しています。悪性腫瘍に対する手術は、切除部位や範囲により手術項目が細分化されているため、上位には計上されていませんが、熊本県指定がん診療連携拠点病院として、外科は悪性腫瘍の手術に積極的に取り組んでおり、胃癌、大腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、乳癌の症例が多くなっています。当院の特徴として、膵がん、胆道がん、肝臓がん等の難治がん手術を数多く手がけ、肝胆膵外科高度技能専門医は1名在籍しており、高難易度の肝胆膵手術も積極的に行っています。また、日本内視鏡外科技術認定医は1名在籍しており、腹腔鏡下手術も積極的に行っています。

消化器内科では、内視鏡を用いた手術症例が多く、胃・十二指腸、特に大腸(結腸から直腸)のポリープや腫瘍(腺腫、早期がん)に対する内視鏡手術を多く行っています。入院当日に手術することが多いので、短期入院での治療になります。胆道疾患(総胆管結石、胆管炎等)に対して胆汁の流れを良くするために、胆道にチューブを留置する内視鏡的胆道ステント留置術や、胆管結石を取り除く内視鏡的胆道結石除去術も多く行っており、少ない回数で治療を完遂しています。小腸結腸内視鏡的止血術は、結腸憩室出血等の症例に対して行われます。針を刺して止血のための薬剤を注入する方法や、内視鏡の止血用に開発された特殊なクリップによって血管や潰瘍をつまんで止血する方法などがあります。上記を含む治療内視鏡を年間約1,000件行っています。ERCPは年間400件以上、EUS(超音波内視鏡)も年間350件以上などと特殊な検査治療も充実しています。

小児科では、乳幼児にみられる腸重積の整復術を行っています。腸重積とは、腸の一部が重なり合ってしまい、血行障害、通過障害をきたす病気です。治療は、透視下空気整復により重積した腸を戻す非観血的整復術を行います。

重篤な疾患である播種性血管内凝固症候群と敗血症、その他の真菌症、手術・術後等の合併症について発症率を集計しています。医療資源を最も投入した傷病名と入院の契機となった傷病名が同一かそれ以外で症例数を集計しています。播種性血管内凝固症候群とは、全身の微小な血管の障害及び血管が詰まることにより臓器に障害が現れます。がんや重症の感染症など、非常に重い病気を持つ患者さんに発症することがあります。また、様々な感染症などから血液に病原菌が入り、敗血症になることがあります。術後の合併症は、手術や処置などの医療行為がもとで生じる疾患です。起こりうる合併症について事前に十分な説明を行うとともに、院内感染対策委員会を設置し、感染の防止に努めています。当厚生労働省の集計条件に基づき、患者数が10未満の場合は「-」の表示としています。

1)当院の値:89.14%(2024年度)
2)項目の解説
周術期の肺血栓塞栓症の予防対策の実施は、肺血栓塞栓症の発生率を下げることに繋がります。予防対策とは、弾性ストッキングの装着や間欠的空気圧迫法(下肢に装着したフットポンプで圧迫マッサージをすること)等を指し、肺血栓塞栓症の発生リスクが高い手術を施行する場合は、術前・術中・術後において実施することが予防対策として有効とされています。当院では、患者さんの状態に応じて手術前に下肢エコー検査を実施し血栓の有無等を確認し、周術期チームが肺血栓塞栓症の予防の正しい知識を持って、安全な対策を実施しています。また、手術後の初回歩行時には、必ず看護師、リハビリスタッフが付き添い、患者さんの症状観察に努めています。

1)当院の値:69.78%(2024年度)
2)項目の解説
抗菌薬を使用する際、投与開始前に血液培養検査を行うことは、感染症の原因となる菌を知るために、必要な検査です。また、血液培養検査の感度を上昇させるため2セット以上の採取が推奨されています。しかし、当院は小児患者(何らかの感染症で入院)の血液培養採取の際、1セットしか採取できない場合も多く、血液培養2セット実施率がやや低い値となっています。成人患者の血液培養2セット実施率は、89.41%(2024/6/1~2025/5/31)でした。昨年度、血液培養ボトルの供給が一時的に減少したため、積極的な2セット採取から症例限定し2セット採取としたため、若干実施率が低下しました。現在は、血液培養ボトルは、安定供給に戻り積極的な2セット採取を実施しています。今後も血液培養検査の有用性を患者さん及び職員に理解してもらい、適切な抗菌薬の使用となるよう活動していく予定です。

1)当院の値:75.14%(2024年度)
2)項目の解説
抗菌薬が効かない薬剤耐性をもつ細菌による感染症が世界的な問題となっています。広域スペクトル抗菌薬は、幅広い細菌に対して効果がありますが、患者さん自身や病院環境の耐性菌を誘導してしまいます。そのため、広域スペクトル抗菌薬を使用する際には特に、細菌培養検査が重要で、原因微生物を特定した場合はその感受性に基づいて、狭域スペクトル抗菌薬に変更が必要です。抗菌薬適正使用支援チーム(AST)は、抗菌薬が適正に使用されているか監視し、教育・啓発などを行なっています。

1)当院の値:2.11‰(2024年度)
2)項目の解説
当院で入院診療された患者さんが、転倒・転落された件数を示す指標です。‰(パーミル)とは1000分の1を1とする単位であり、1‰は0.1%となります。当院では患者さんの安全な入院生活のために病状・状況に応じて様々な転倒・転落予防策を講じています。転倒転落を完全に防止することは難しいですが、発生件数や事例の分析を行い、発生要因を特定し、予防策を実施することで転倒転落発生の低減に役立てています。

1)当院の値:-
2)項目の解説
「転倒転落によるインシデント影響度分類レベル」は、患者さんに与えられた影響の度合いを示す指標で、3b以上は転倒転落により処置や治療が必要な損傷です。当院では分子の値が10件未満と小さく、医療の質として良好な結果が得られています。10件未満は「-(ハイフン)」で表示することになります。

1)当院の値:98.60%(2024年度)
2)項目の解説
予防的抗菌薬とは、手術部位感染(SSI)発症率の減少を目的とし、あらかじめ抗菌薬を投与することです。手術執刀開始1時間以内に適切な抗菌薬を投与することで手術後の手術部位の感染発生を予防し、入院期間の延長や医療費の増大を抑えることができると考えられます。当院では、手術を受けるすべての患者さんの安心・安全のため、院内抗菌薬使用の手引きに「手術別の術中汚染菌と予防抗菌薬の選択」を定め、手術後の感染予防に積極的に努めています。しかし、虫垂炎や腹膜炎など感染症を伴う部位の手術では、1時間以上前から抗菌薬を投与することがあるため、100%となっていません。また、手術時間に応じて術中追加投与を行うため、タイマーを活用し確実に予防抗菌薬が投与できるよう周術期チーム全体で取り組んでいます。

1)当院の値:0.04%(2024年度)
2)項目の解説
当院で入院診療を受けられた患者さんにd2(真皮までの損傷)褥瘡が新規に発生した件数を示す指標です。褥瘡は患者さんのQOL(生活の質)を低下させ、入院期間の長期化や医療費の増大につながるため褥瘡発生率を把握し、予防に努めることが重要です。当院では多職種による褥瘡対策委員会を設置し褥瘡対策を検討することで、褥瘡の院内発生の低減に努めています。また「皮膚・排泄ケア認定看護師」が在籍しており、褥瘡発生の原因となる皮膚トラブルや失禁によるかぶれなどのケアを強化しています。

1)当院の値:100%(2024年度)
2)項目の解説
65歳以上の入院患者さんに48時間以内に栄養状態を評価し、適切な栄養管理計画を立てることの指標です。早期に低栄養リスクを評価し適切な介入を行うことで、在院日数の短縮、予後改善につながります。この指標は医療機関の栄養管理体制を表すとされています。当院では管理栄養士が各病棟を担当しており、入院時に患者さんの栄養評価を行っています。また多職種による栄養サポートチームによる回診・カンファレンスを通じ入院患者さんの栄養管理を行っています。

1)当院の値:0.85%(2024年度)
2)項目の解説
入院患者さんのうち、身体拘束を受けている患者さんの割合を示す指標です。治療上必要に応じてチューブやドレーン類を使用していますが、患者さんの状態によっては、自己抜去や転倒・転落の危険性があります。そのため、安全確保のため、やむを得ず実施することがあります。当センターでは、身体拘束抑制最小化チームを設置して、安易に身体拘束をするのではなく、患者さんの安全を確保しながら、患者さんの尊厳と人権が損なわれないように多職種で検討し身体拘束の最小限に努めています。