『患者さんと共にある看護を実践する』
~やさしさと思いやりをもって、必要とされていることを必要な時に提供する~
2020年4月はじめて院内に新型コロナウィルスが侵入し、その後新型コロナとの戦いは3年に及び第8波まで経験しました。特に2022年度は、夏の第7波、年末年始を挟んだ第8波は熊本市でも毎日千人を超える市民が罹患し、コロナ対応病棟のみならず外来、病棟すべての部署で職員一丸となって闘い、大きな危機を乗り越えてきました。そして、2023年5月に新型コロナウィルスは5類へ移行しました。誰もが経験をしたことのない感染症との闘いではありましたが、看護職員ひとり一人が覚悟と責任をもって「コロナ禍であっても、看護部の使命は病院理念の具現化なり」それぞれの立場で目標に向かい組織を支えてきました。これからも終わりなく感染管理は継続していきますが、常に病院の使命を全うできるように取り組んでいきます。
今年度の看護部目標は「余力管理」~チームの目的に向かい協働し最高のパフォーマンス(看護の専門性)を発揮する~としました。協働とは、同じ目的のために共に働き成果を出すことです。当院には、病院理念に3つのよかった「かかってよかった。紹介してよかった。働いてよかった。」があります。最高のパフォーマンスとは、3つの「よかった」に対しての課題解決や、これまでの取り組みのさらに高みを目指すなど委員会、各看護単位、各チーム、個人が限りある時間の中で協働し成果につながるように余力管理(時間管理)をすることを意味しています。
具体的な取り組みとして、医師のタスクシフト・シェアが進むなかで、看護師も看護サポーター(看護補助者やクラーク)との協働や多職種と協働がさらに必要です。フレイルの高齢患者さんの入院が増え、転倒予防や要介護状態の生活支援は年々増えています。このような中で看護の専門性を発揮するとは、看護師が優先度の高い業務に専念し、意思決定支援や医学管理に集中してケアにあたれるように、チーム活動や協働を促進させ業務の効率化をめざします。
次に、人材育成と働き続けられる職場環境づくりです。当院では毎年職場環境アンケートを実施しています。2021年度のアンケート結果ではコロナ感染禍が長期化していることで仕事と生活に疲れが感じられました。そこで師長会では、各スッタフと向き合い定期面接に限らず活力につながるモチベーション管理として「対話」に力を入れるなど、職場環境の改善に努めてきました。その結果、2022年度の職場環境アンケートでは全体的に改善が見られ、特に「変化への対応」「多様な労働者への対応」「成長の機会」の改善は成果に繫がったといえます。今年度は、自身のやりたい看護の実現と合わせて仕事をすることでの活力の回復とワークライフバランスを保ち「ワークエンゲージメント」を高めることを継続していきます。
社会活動の再開とともに、これからも時代の変化に柔軟に対応できるように「余力管理」「先読みの看護」は必須といえます。2023年度は活力を取り戻し、変化に対応し3つの「よかった」の実践に取り組んでいきます。
当院外来は、紹介型外来、市の委託事業である休日夜間急患センター、外来がん化学療法などの多様な役割において、受診される患者さん、そして地域の先生方の満足に貢献できるよう努力しております。今年度も引き続き、スタッフ各々がスキルアップし、患者満足度の向上に向け取り組んで参りたいと思う所存です。2年前より、「新型コロナウイルス」の脅威に立ち向かいながら、医療従事者として今求められていることに邁進して参りました。今後も、病院理念である「かかってよかった。紹介してよかった」と思っていただける外来であることを目指し、万全の体制に努めて参ります。医療サービスの質は、感染が第一との言葉もあります。「入れない・拡げない」ことをモットーに、当院の入り口としての役割を全うして参ります。
検査部は、患者さんの検査・治療が安全・安楽かつ確実に行われるように、検査前・中・後を通して看護を提供しています。検査の効率性と正確性を向上させるために、前処置をはじめ、日々進化する診断や治療法に対応するために必要な専門的知識・技術を習得することに努めています。心臓カテーテル治療や透視などのIVRと、県下を代表する検査件数を担う内視鏡部門の医療の質を維持するためには、医師・内視鏡技師・放射線技師と協働することが重要です。当センター検査部は、今年度も更に検査チームの連携を強化し、検査を受けるすべての患者さんに安心・安全な検査環境が提供できるよう取り組んでいきたいと思います。
本館3階北病棟は、41床( 3 階フロア 35 床 + 救急病床 6 床 )の急性期病棟です。呼吸器内科、循環器内科、消化器内科の患者さんが多くを占めています。個室を11室保有していることから、緊急入院や重症度の高い患者さんに即応でき、HCUのバックベッドとしての機能も担っています。また、急性期の検査や治療を終え、速やかに元の生活が営めるように多職種と協働しながらチ-ム医療に取り組んでいます。患者さんやご家族に「かかってよかった」と思っていただけるよう安心・安全な看護を提供していきます。
本館3階南病棟は3階南フロアに27床と、サテライトとして4階南フロアに21床を有する48床の病棟です。消化器内科、呼吸器内科、代謝内科の患者さんが主に入院をなさっています。急性期から「患者さんの持つ力」を維持・向上できるケアをチームで提供し、「生活の場」に早く戻ることが出来るよう、ひとつひとつのケアを丁寧に行う事を大切にしています。病院理念である「かかってよかった」と多くの患者さんに思って頂けるような病棟になれるよう日々努めて参ります。
小児病棟は熊本方式として、小児初期救急医療を担い、年間約1700名の入院患児を受け入れ、そのうち、食物アレルギー負荷試験目的の入院が400名程を占めています。また入院患児の殆どが、かかりつけの先生方からのご紹介、ならびに夜間受診の緊急入院です。昼夜を問わずいつでも入院対応ができるようスタンバイしています。急な入院を余儀なくされて不安でいっぱいのご家族や患児が安心して入院生活を送っていただけるように、スタッフ一同取り組んでおります。
緩和ケア病棟は2001年に開設し、現在14床で稼働しています。当院の緩和ケア病棟は、症状コントロールを行い、落ち着いたら退院して自宅で過ごすという在宅支援に力を入れています。がんの進行によって生じる体のつらさや気持ちのつらさを和らげられるように、多職種との協働や看護師の緩和ケアに対する技術の向上に努めています。また、緩和ケア相談外来では、その時々の体調に適した生活の場を一緒に考えていきます。今後も、緩和ケア病棟の利用に柔軟に対応していきたいと考えています。
当病棟は、主に手術や抗がん化学療法を受けられる方が多い外科病棟です。年間の手術患者さんの約8割の術後管理を行っており、多職種と協働を図りながら、早期の術後回復に向けた安全・安楽な看護の提供を心がけております。患者・家族のお気持ちに寄り添い、必要とされていることを必要な時に提供できる看護師となり得るよう全員で力を合わせ、より一層努力して参りたいと考えております。
本館5階南病棟は、急性期病棟での治療を終えられた方や、体力・ADLの回復、医学管理の習得などを目的に、その後の生活の場へ戻る準備期間として過ごしていただく病棟です。昨今の様々な問題を抱えた方々が、できる限り住み慣れた地域への退院が叶うよう、院内外の医療・介護スタッフと協働しながら看護に努めております。地域包括ケアの考えのもと、周辺の病院方とも連携し、今後も患者さまのケアに努めてまいりたいと考えております。
スタッフひとりひとりが患者さんやご家族に寄り添い、丁寧なケアを心がけ、より安心安全な医療が提供できるように取り組んでいます。ご紹介頂いた医療機関や施設との連携により一層取り組みながら、患者さんに「かかってよかった」と思って頂ける病棟へと研鑽していきたいと思います。
HCUには心筋梗塞・心不全、呼吸不全、膵・胆・肝などの術後の患者さん方が入室されます。日々、多職種と連携しながら、早期回復に向けて高度急性期ケアの質の向上に努めております。また当院看護部の「かかってよかった戦略:ひとつ屋根の下にいる患者さんをみんなで看る」ことのできる看護師を育てるために、HCU看護師は院内全体の高度急性期看護のスキルアップの指導的役割を担っています。救急外来、HCU、一般病棟、そして地域へと病期に応じたシームレスなケアの提供を行い、患者さんが住み慣れた地域に安心して退院して頂けることを大切にしています。
当院の手術は、消化器系が大半を占め、その内半数以上が鏡視下手術です。年々特殊な器械の取り扱いが増え、臨床工学技士と協働し、安全に手術が終了するように努めています。また、手術室看護師は、手術室だけに留まらず、病棟に出向き周術期看護を提供し、患者さんに安全安楽な手術が提供できるよう日々自己研鑽に努めています。中央材料室は、院内で必要な器材の洗浄・消毒・滅菌を行い、物品の安全性を優先したコスト管理も行っています。言わば“縁の下の力持ち”的存在です。手術室・中央材料室は、目くばり・気くばり・心くばりで患者さんに安心・安全な看護が提供できるように取り組んでいきます。
1994(平成6)年より、キャリア開発ツールを用いて看護師個々の看護実践能力を高める教育体制を構築しています。以下に示す「看護部教育指針」のもと「看護師教育のリソース」が中心となり、「組織が求める看護師」の育成に取り組んでいます。患者さんをトータルにとらえ、退院後の生活の場までも思いを馳せた看護ができるように、教育プログラムの充実、業務改善に努めてまいります。また、コンパクトサイズの病院だからこそできる「いつでもどこでも組織のリソースになることができる」ポリバレントナースの育成に努めます。
スキルを学ぶ・スキルを使う・スキルを伝える*日常の看護実践を通し信頼を得、専門職業人の誇り(充実感・やりがい)を育む
あなたでよかったと思える看護師
看護部運営委員会看護部運営委員会は、それぞれが持っているスキルを伝え、スキルを使って看護部の将来像の実現、組織が求める看護師の育成に向けた、教育プログラムの企画・運営をしています(図3)。
褥瘡などの創傷管理やストーマ・失禁などの排泄管理、患者家族の自己管理及びセルフケア支援を行っています。デリケートな領域に関わることが多く、患者さんの不安や問題に一緒に向き合うことを大切にしながら、専門的知識と技術を患者さんの社会復帰に結び付けられるよう実践しています。患者さんへのケア・指導も行っています。今後も看護師個々の実践力向上へ向けて、活動の幅を広げていきたいと考えています。
患者さん・ご家族が抱える全人的苦痛を緩和し、その人らしく生きることができるように、希望を支え、つらさに注目しながら症状マネジメントや家族看護、意思決定支援などを行っています。今後は、院内のがんサバイバーシップにおける各期の動向を理解しながら、看護の質の向上や他職種連携が図れるように取り組んで参ります。困ったことがあれば気軽に声をおかけ下さい。
患者さん、ご家族はがんと診断されてから治療方法や療養場所など様々な意思決定が必要になってきます。そのたびに不安や心配がでてくることもあるかもしれません。そんなとき、緩和ケア認定看護師は、患者さんやご家族に寄り添い、その方々がこれまで生きてきた過程、価値観を大事にしながら他職種とともに意思決定を支えていきたいと考えています。今後は院内のがん看護の質向上、地域とも連携しながら早期からの緩和ケアに取り組んでいきたいと思います。
私は現在、外来に勤務していますが、緩和ケアはがん患者さんだけではなく、循環器や呼吸器など様々な疾患において早期からの介入や意思決定支援が必要と考えます。患者さんとご家族を全人的に捉え、その人らしさを支えるケアを多職種で連携し支援していきたいと考えています。また、チーム活動や患者さんへのケアを通して専門性を持った知識と技術、リソースとして活動の幅を広げることで看護の質の向上につながるよう取り組んで参ります。
慢性心不全の病態や治療は複雑化・多様化しており、その管理は長期にわたります。患者さん自身が治療計画に参加し身体症状の理解を深め、医療資源や社会資源を上手に活用しながら、生活を調整していく必要があります。このような患者さんの病状や病期に応じた症状モニタリングとアセスメント、自己管理能力を高める支援や心理的支援を専門的に行うことを使命としています。入院中、通院中の患者さん共に安楽に在宅での生活が送れるよう看護介入を行っていきたいと思います。
私は2016年救急看護認定看護師として資格を取得しました。救急外来は患者さんやご家族と接する時間が短く、情報の少ない患者さんをフィジカルアセスメントで判断するため、これまで学んだ知識やスキルを使い短い時間で行動へ移さなくてはなりません。救急患者さんは時と場所を選ばず発生し、対象はあらゆるライフステージの患者さんとそのご家族です。そのために、学習を継続し、チーム力向上に努めたいと考えています。災害看護では実際に熊本地震を経験しました。災害はそれぞれの時期での対策や看護が傷病者の予後に影響します。地域における救急医療と災害医療の体制づくりに貢献していきたいと思います。
認知症看護認定看護師は、脳の障害によって生活がしづらくなった人の日常的な意思決定支援や、生活行動を支える役割があります。認知症の発症から終末期まで、高齢者の心身の状態を含めて統合的にアセスメントし、適時・適切なケアを提供していきます。また、介護家族を含めてケアをする上での困りごとやせん妄への対応に、組織として取り組むためにシステムの構築を目指します。認知症者の「人」としての尊厳を守り、ケアのプロセスをふみながら、認知症ケアの質向上に皆さんと取り組んでいきたいと思います。
認知機能の低下がある方は環境の変化に敏感です。また、慣れない環境で生じる困りごとを自ら訴えることが難しい方もいらっしゃいます。そのような患者さんの治療・ケアに対する戸惑いや不安に気づき、せん妄や行動・心理症状の出現の予防や緩和が図れるよう日々努めています。患者さんから見ると我々も環境の一部です。患者さん自身が、周囲から受け入れられ尊重されていると実感できるような関りを大切にし、安心して治療を受けて頂けるよう、当院の認知症看護の実践力の向上に向けてスタッフと一緒に取り組んでまいりたいと思います。
感染管理認定看護師は、自らの足と目で現場の問題を発見し、現場のスタッフと共に解決していく役割があります。また、第2種滅菌技士として洗浄・消毒・滅菌の分野の改善に努めていきたいと考えています。今後は、院内のみならず地域の感染対策にも目を向け行動していきたいと思います。
感染管理認定看護師として、病院内における感染対策の状況や問題点の把握を行い、改善への介入など、日々病院全体を駆け回っています。入院や通院の患者さんだけではなく、病院を訪れる来院者、病院スタッフも含めて感染の脅威から守ることが感染管理認定看護師の役割の一つです。今後は病院内だけではなく、地域の感染対策への活動も行っていきたいと考えていますので、宜しくお願いいたします。
「看護業務の効率化先進事例アワード2019」は厚生労働省の看護業務効率化先進事例集・周知事業として日本看護協会が受託したものです。看護業務の効率化に関する優れた効果・成果を上げている事例や、それにより医療・看護ケアサービスの充実や実現した事例の募集がありました。当院は、「ユニフォーム2色制」「ポリバレントナースの育成」による持続可能な残業削減への取り組みと題してエントリーをした結果、最優秀賞を受賞しました。受賞後3本の矢の強靭化に向けて取り組んできました。
2022年度より4本目の矢として「業務の可視化と業務シャッフル」を追加して更なる強靭化をめざしています。
【商標登録】
商標原簿に登録されました
「ポリバレントナース育成システム」 登録日 令和2年8月13日(登録第6279824号)
「ユニフォーム2色制看護提供方式」 登録日 令和2年10月16日(登録第6304719号)
「看護業務の効率化先進事例アワード2019」取組の動画はこちら
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