外科部門は常勤医7名、非常勤医4名で診療しております。いつでも必要な時には“すぐにでも入院が可能”なのが当院の特徴です。“どんな疾患でも、昼夜を問わず”、当日の外科外来担当(夜間は当直医)までご一報いただければ、迅速に対応させていただきます。ただし、整形外科疾患、心臓血管外科疾患につきましては、専門医がおりませんので他院へご紹介いただければと思います。
上部消化管疾患では食道癌、食道裂孔ヘルニア、胃癌、胃GIST、胃・十二指腸潰瘍(出血、穿孔例)などを取り扱っています。その中で多いのは胃癌であり、図1に手術症例数の年次推移を示しています。近年約半分を腹腔鏡下手術で行っています。腹腔鏡下手術は主に早期癌を対象としD1+郭清を行い、腹腔鏡下幽門側胃切除術、腹腔鏡下胃全摘術、腹腔鏡下噴門側胃切除術があります。腹腔鏡手術は、低侵襲が望まれる症例では進行癌にも行う場合があります。進行癌/リンパ節転移症例などでは、主に開腹手術(D2郭清)を行っています。また、これらの症例では、適応があれば治療の効果を上げる目的で術後補助化学療法を行います。当科の胃癌ステージ別術後長期成績(生存曲線)を図2に示します。
胃癌または胃潰瘍手術後の残った胃にできた癌のことを残胃癌といいます。その発生率は胃癌全体の1-2%と少ないのですが、進行癌の場合には予後が不良といわれています。当科における過去28年間80例の残胃癌手術症例を調査しましたところ通常の胃癌よりも生存率がやや低くなりました。また、進行残胃癌(pT3/pT4)においては脾摘を伴うリンパ節郭清が予後の改善につながる結果となりました。その理由は進行残胃癌(pT3/pT4)における高率の脾門部リンパ節転移(30.4%)によると考えられました。この結果は欧文雑誌Surgeryに掲載され(参考文献:Sugitaet.al.Surgery2016;159:1082-1089)、2021年改訂胃癌治療ガイドライン第6版(日本胃癌学会)に紹介されています。当科における残胃癌のステージ別長期成績(生存曲線)を図3に示します。
大腸および小腸のがんや、腹膜炎、腹腔内出血などの緊急疾患に対し、消化器内科、放射線科および麻酔科などと協力し、迅速かつ最適な治療を行っています。腫瘍が大きい場合や遠隔転移のある場合でも、薬物療法などを行って根治的な切除を目指します。直腸がんでは病状に応じて化学放射線療法を行うことがあります。当院における2016年から2021年までの457例の大腸がん手術例(非治癒切除も含む)の生存率はStageIで90%、StageIIで78%、StageIIIで67%、StageIVで19%となっています。2021年の大腸がんの手術症例は62例で、うち48例(77%)を腹腔鏡で行っています。切除不能の進行・再発大腸癌や、治癒切除後の進行癌で再発の可能性が高い方においては、日本の大腸癌治療ガイドラインや海外の治療ガイドラインを基本として、年齢・全身状態を考慮しつつ、患者さんやご家族の希望に沿ったテーラーメイドの化学療法・分子標的薬治療・免疫療法を行っています。
主な疾患の年間手術件数(2021年)は以下の通りです。
肝臓癌(肝細胞癌・肝内胆管癌・転移性肝癌)、胆道癌(肝門部領域胆管癌・遠位部胆管癌・胆嚢癌・十二指腸乳頭部癌)などの悪性腫瘍のほか、胆嚢結石症、総胆管結石症、先天性胆道拡張症、膵胆管合流異常症、門脈圧亢進症などに対する手術を行っています。
肝癌診療ガイドラインを参考にがんの根治性と切除の安全性に配慮し切除率や肝予備能から術式の選択を行います。Vinscentを用いて術前より緻密な手術シミュレーションを行います。肝予備能が足りない症例には門脈塞栓術を行い、残存肝の肥大を待って肝切除の適応拡大や手術危険性の低減を図ります(図症例提示)。肝切除は可能な症例は腹腔鏡手術を行い、低侵襲化を目指しております(図症例提示)。近年抗悪性腫瘍薬が進歩し、肝臓癌に対する治療選択が飛躍的に増大しています。テセントリク+アバスチンやレンビマといった奏効率の高い薬剤で初診時は手術不能であっても治療効果が得られると手術が可能になる症例も存在します。肝内胆管癌においては最近治療効果の高いペミガチニブが保険適応になりました。遺伝子検査が必要になり、その頻度は10-15%程度と高くはないものの、積極的に行っています。当院では外科・消化器内科で抗癌剤治療も行っており、情報交換を行いながら積極的な手術適応のある症例については十分相談を行います。
胆道癌に対してもガイドラインに沿った膵切除、肝切除、胆道再建などの根治切除を行っております。胆嚢癌については腹腔鏡下拡大胆嚢摘出術が保険適応となり、腹腔鏡下手術も行っております。一方、局所進行例や転移再発といった一般的には切除不能の状況であっても、一定期間抗がん剤治療が奏功する例にはConversionsurgeryの有効性も期待し、個々の症例に応じて十分な相談を行った上で積極的に手術(根治目的もしくは局所コントロール目的の切除)を行う場合もあります。
胆嚢に対してはガイドラインに沿って治療時期、手術内容を決定します。年間手術症例数は増加しており、2021年は180例でした。脾機能亢進症に対しては腹腔鏡下脾臓摘出術を行っております。有症状の肝嚢胞に対しては腹腔鏡下肝嚢胞円蓋切除術を行っています。膵胆管合流異常症に対する手術は、腹腔鏡下手術が保険適応となっており、胆管癌の併存がない例には腹腔鏡下手術を行っております。
当院における膵臓外科の特徴は次の3つです。
当院における膵臓外科の特徴は次の3つです。
鼠径ヘルニアは、腹部と下肢の境界付近の腹壁のやや脆弱な部分から、腹腔内の脂肪や腸管、膀胱などが筋層内や皮下に脱出する状態です。局所の痛み、不快感が主な症状ですが、腸管が脱出して、ヘルニア内にはまり込む“嵌頓(かんとん)”という状態になりますと、緊急処置や手術が必要になります。“病気”というよりも体の構造の“歪み”のようなものであり、内服薬や装具での根治方法はないため、手術が唯一の治療法です。脆弱になっているヘルニアの出口部分(ヘルニア門)の補強手術を行いますが、近年の標準手術は人工補強材(ポリプロピレン製などのメッシュ)を用いて補強を行う方法です。さらに、鼠径部に直接アプローチする前方切開法と、鼠径部から離れたところからアプローチする腹腔鏡下手術に大別されます。
前方アプローチ手術は鼠径部に4から5cm程度の皮膚切開を行い、メッシュを用いて補強を行う方法です。従来からある方法で、全身麻酔を必要とせず、脊椎麻酔、局所麻酔で手術が可能であるため、呼吸器疾患、循環器疾患などをお持ちの方でも行える方法です。腹腔鏡下手術は近年行われるようになった方法であり、腹部に0.5から1.2cm程度の傷を3ヵ所あけ、腹腔内あるいは腹壁内からの操作にて、メッシュを用いてヘルニアを修復する方法です。全身麻酔を要する、手術時間がやや長いなどのデメリットがありますが、傷が小さい分、術後の疼痛が少ないというメリットがあり、当院では積極的に腹腔鏡手術を行っています。患者さんそれぞれに安全で適切な手術方法を提案させて頂いております。その他、関連疾患として、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなどがあり、これらのヘルニアに対しても手術を行なっています。
内・外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニア
年間手術数(2021年)は以下の通りです。前方アプローチ手術(主にクーゲル法):62例腹腔鏡下手術(TAPP法およびTEP法):29例
肺癌は近年増加傾向にある疾患であり、検診や各種画像診断の向上により早期肺癌が発見されることが増加しています。肺癌の標準治療は肺葉切除+縦隔リンパ節郭清であり、近年は胸腔鏡下に手術を行うことが一般的となっております。また、大腸癌による転移性肺腫瘍(肺転移)に対しては、根治が可能な症例に関しては、積極的な切除が推奨されています。これら肺悪性悪性腫瘍と診断された場合には、熊本大学呼吸器外科に紹介し、手術の依頼を行っております。また、良性疾患として、自然気胸と呼ばれる疾患があります。若い、痩せた男性に多い疾患で、肺にブラと呼ばれる袋が形成され、何らかの理由でブラが破けて、肺が縮まる緊急性のある疾患です。根治的には手術が必要で、当院にて手術は可能です。腹腔鏡下ブラ切除を行い、胸腔ドレーンは早期に抜去する方針としています。短期入院での治療が可能であり、術後2~5日程度で退院可能であり、患者さんのニーズに合わせた対応が可能です。
乳がんは近年増加傾向にあり、女性の罹患数は1位となっています。一方、死亡率は決して高いわけではなく、全がん死亡率中5位となっています。リンパ節転移のない2cm以下の乳がんでは10年生存率は99%以上であり、リンパ節転移があっても転移個数が数個と多くなければ、適切な治療を受けることで80%以上の方に10年生存が望めます。“乳がん”と一括りに語られることが多いですが、実は遺伝子背景やホルモン感受性の有無などからいくつかのサブタイプに分類されます。これらのサブタイプごとに適切な治療を選択していくことで高い治癒率、病勢制御率を望むことが出来ます。このため、進行度とサブタイプ毎に治療法が異なっており、専門医と相談しながら治療法を決定していく必要があります。当院では手術療法を中心に、検診後の精密検査や術後の補助療法、再発後の治療などの乳がんの治療を行っています。手術治療には大きく分けて乳房を残す温存手術と乳房をすべて切除する乳房全摘除術があります。また、腋窩リンパ節に対しては術中に迅速病理検査を行う、センチネルリンパ節生検を行い、リンパ節転移陽性の場合にだけリンパ節郭清を行うことを基本治療としています。検査結果が出るのに30分程度かかりますが、乳房手術と同時に施行でき、根治性を担保しつつ手術の負担軽減を図っております。
役職 | 院長 |
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卒業年度 | 昭和63年卒 |
外来診察日 | 木曜日 |
セカンド・オピニオン外来 | 月曜日(予約制) |
資格等 |
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役職 | 外科部長 |
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卒業年度 | 平成12年卒 |
外来診察日 | 火曜日 |
資格等 |
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役職 | 消化器外科部長 |
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卒業年度 | 平成13年卒 |
外来診察日 | 金曜日 |
資格等 |
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役職 | 医員 |
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卒業年度 | 平成23年卒 |
外来診察日 | 月曜日 |
資格等 |
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役職 | 医員 |
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卒業年度 | 平成26年卒 |
外来診察日 | 水曜日 |
資格等 |
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役職 | 非常勤医師 |
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卒業年度 | 昭和52年卒 |
外来診察日 | 金曜日 |
資格等 |
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役職 | 非常勤医師 |
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卒業年度 | 昭和58年卒 |
外来診察日 | 月曜日(第2・4週) |
資格等 |
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役職 | 非常勤医師 |
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卒業年度 | 平成27年卒 |
外来診察日 | 木曜日 |
資格等 |
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