診療科・部門案内

外科

 外科部門は常勤医6名、非常勤医3名で診療しております。いつでも必要な時には“すぐにでも入院が可能” なのが当院の特徴です。“どんな疾患でも、昼夜を問わず”、当日の外科外来担当(夜間は当直医)までご一報いただければ、迅速に対応させていただきます。ただし、整形外科疾患、心臓血管外科疾患につきましては、専門医がおりませんので他院へご紹介いただければと思います。

上部消化管外科

上部消化管疾患では食道癌、食道裂孔ヘルニア、胃癌、胃GIST、胃・十二指腸潰瘍(出血、穿孔例)などを取り扱っています。その中で多いのは胃癌であり、図1に胃癌手術症例数の年次推移を示しています。2023年は16例の胃癌手術を行い、約9割を腹腔鏡下で行っています。また当院は日本胃癌学会の認定施設にも認定されています。
 腹腔鏡下手術には、腹腔鏡下幽門側胃切除術、腹腔鏡下胃全摘術、腹腔鏡下噴門側胃切除術があります。腹腔鏡手術では困難な進行癌に対しては開腹にて行っています。進行の程度によってリンパ節郭清の程度が異なります。進行癌では、多くの場合治療の効果を上げる目的で術後補助化学療法を行います。当科の胃癌ステージ別術後長期成績(生存曲線)を図2に示します。
 胃癌または胃潰瘍手術後の残った胃にできた癌のことを残胃癌といいます。その発生率は胃癌全体の1-2% と少ないのですが、進行癌の場合には予後が不良といわれています。当科における過去28年間80例の残胃癌手術症例を調査しましたところ、通常の胃癌よりも生存率がやや低くなりました。また、進行残胃癌(pT3/pT4) においては脾摘を伴うリンパ節郭清が予後の改善につながる結果となりました。その理由は進行残胃癌(pT3/pT4) における高率の脾門部リンパ節転移(30.4%)によると考えられました。この結果は欧文雑誌Surgery に掲載され(参考文献:Sugitaet. al. Surgery 2016;159:1082-1089)、2021年改訂胃癌治療ガイドライン第6版(日本胃癌学会)に紹介されています。当科における残胃癌のステージ別長期成績(生存曲線)を図3に示します。

下部消化管外科

特徴

大腸および小腸のがんの手術を中心とした治療を行います。腫瘍が大きい場合や遠隔転移のある場合でも、薬物療法などを行って根治的な切除を目指します。直腸がんでは病状に応じて化学放射線療法を行うことがあります。
 当院における2017年から2023年までの大腸がん手術(非治癒切除も含む)451例の生存率はStage Ⅰで90%、StageⅡで97%、StageⅢで85%でした(図1)。
 切除不能の進行・再発大腸癌や、治癒切除後の進行癌で再発の可能性が高い方においては、日本の大腸癌治療ガイドラインや海外の治療ガイドラインを基本として、年齢や全身状態を考慮しつつ、患者さんやご家族の希望に沿ったテーラーメイドの薬物治療・免疫療法を行っています。
 また、腹膜炎、腸閉塞、腹腔内出血などの緊急疾患に対し、消化器内科、放射線科および麻酔科などと協力し、迅速かつ最適な治療を行っています。症例に応じて、適応があれば腹腔鏡手術を行うことで、患者さんにやさしい低侵襲の治療を目指しています。
 2023年の大腸癌手術症例は86例で約8割を腹腔鏡下で行っています(図2)。その他虫垂炎手術100件(開腹0件・腹腔鏡100件)(図3)、腸閉塞手術(開腹7件・腹腔鏡21件)(図4)でした。

取り扱う疾患

  1. 大腸悪性疾患(結腸・直腸癌、GIST など)
  2. 小腸悪性疾患(癌、GIST など)
  3. 小腸・大腸の良性疾患(憩室炎、腸閉塞、クローン病、潰瘍性大腸炎など)
  4. 小腸・大腸の緊急疾患(絞扼性腸閉塞、急性腸間膜虚血、小腸穿孔性腹膜炎、大腸穿孔性腹膜炎など)

肝臓・胆道外科

 肝臓癌(肝細胞癌・肝内胆管癌・転移性肝癌)、胆道癌(肝門部領域胆管癌・遠位部胆管癌・胆嚢癌・十二指腸乳頭部癌)などの悪性腫瘍のほか、胆嚢結石症、総胆管結石症、先天性胆道拡張症、膵胆管合流異常症、門脈圧亢進症などに対する手術を行っています。

1.肝臓癌

 ガイドラインを参考にがんの根治性と切除の安全性に配慮し切除率や肝予備能から術式の選択を行います。
 最近では可能な症例に対しては積極的に腹腔鏡手術を行い、低侵襲化を目指しております。年々腹腔鏡下肝切除術は増えてきており、昨年は7割を腹腔鏡下で行いました(図1)。また高難度の肝臓手術に対しても腹腔鏡下で行いました(図2;腹腔鏡下拡大肝後区域切除術)。
 術前より緻密な3D 画像を作成し手術シミュレーションを行うことで安全性の高い手術が行えるようにしています。肝予備能が足りない症例には門脈塞栓術を行い、残存肝の肥大を待って肝切除の適応拡大や手術危険性の低減を図ります。肝細胞癌に対しては近年抗悪性腫瘍薬が進歩し、肝臓癌に対する治療選択が飛躍的に増大しています。テセントリク+アバスチン、デュルバルマブ+トレメリムマブやレンバチニブといった奏効率の高い薬剤で初診時は手術不能であっても治療効果が得られると手術が可能になる症例も存在します。小型の肝細胞癌に対してはマイクロ波局所凝固療法も行っています。
 肝内胆管癌においては最近治療効果の高いペミガチニブが保険適応になりました。遺伝子検査が必要になり、その頻度は10-15% 程度と高くはないものの、積極的に行っています。当院では外科・消化器内科で抗癌剤治療も行っており、情報交換を行いながら積極的な手術適応のある症例については十分相談を行います。

2.胆道癌

 胆道癌に対してもガイドラインに沿った膵切除、肝切除、胆道再建などの根治切除を行っております。胆嚢癌については腹腔鏡下拡大胆嚢摘出術が保険適応となり、腹腔鏡下手術も行っております。一方、局所進例や転移再発といった一般的には切除不能の状況であっても、免疫チェックポイント阻害剤+抗癌剤治療などが奏功する例にはConversion surgery の有効性も期待し、個々の症例に応じて十分な相談を行った上で積極的に手術(根治目的もしくは局所コントロール目的の切除)を行う場合もあります。

3.良性疾患

 胆嚢に対してはガイドラインに沿って治療時期、手術内容を決定します。年間手術症例数は増加しており、2023年は196例(うち腹腔鏡下胆嚢摘出術191件)でした。脾機能亢進症に対しては腹腔鏡下脾臓摘出術を行っております。有症状の肝嚢胞に対しては腹腔鏡下肝嚢胞円蓋切除術を行っています。膵胆管合流異常症に対する手術は、腹腔鏡下手術が保険適応となっており、胆管癌の併存がない例には腹腔鏡下手術を行っております。

膵臓外科

 膵がんは極めて予後不良ながんです。近年はさまざまな抗がん剤、分子標的治療が開発され、それら化学療法と手術を組み合わせた集学的治療を行っています。とくに切除可能境界膵癌(Borderline resectable)に対してはFOLFIRINOX 療法やゲムシタビン+アブラキサン療法による術前化学療法を個々の症例に応じて選択しています。近年では局所進行や遠隔転移で切除不能と診断されても、化学療法が奏功し根治切除が可能となる症例も増えてきています。2023年の膵臓手術は29件、うち膵癌は13例でした(図1)。
 当院における膵臓外科の特徴は次の4つです。

1.血管合併切除の積極的併施による手術適応決定
 膵臓癌の予後は、切除できたか否かで大きく違ってきますので、当院では、門脈―大循環もしくは門脈―門脈バイパスを用いた上腸間膜静脈―門脈の合併切除、自家血管グラフトによる間置再建、上腸間膜静脈多数本分枝の一本化形成後再建など、外科の技術を駆使して切除率を高めています。現在進行膵癌の切除適応分類として切除境界(borderline resectable)膵癌の概念が浸透していますが、当院の切除境界膵癌の占める割合は20% 強と高い割合を占めています。


2.腹腔鏡下尾側膵切除+リンパ節郭清(Lap-RAMPS)
 リンパ節郭清が必要である膵癌においても膵体部~尾部の癌に対しては腹腔鏡手術を導入しています。腹腔鏡下で行うことでより低侵襲でかつ根治性の高い手術を行っております(図2)。傷が小さく退院や社会復帰が早いのが特徴です。


3.ノータッチ膵切除術(no-touch pancreatectomy)
 癌の手術においては、病巣を触ると病巣の内圧を高めて癌細胞をばらまくような操作につながる可能性があります。これは膵臓癌の手術においても同様でありますが、当院では病巣を触らずに切除する手術術式(no-touch pancreatectomy)を開発し実践しています(Hirota et al. Scand J Surg 2012,J Pancreas2017)。2010年以降10年間で156例の膵癌手術を施行し、根治手術(R0)ができた場合(R0施行率86%)の5年生存率は37% と良好な成績を上げています。抗癌剤や放射線治療などの集学的治療により、膵癌治療成績は確実に改善してきています。さらに、周術期の膵臓に特化した栄養管理・糖尿病管理や、再発・進行癌に伴う症状緩和治療などふまえた生活の質にも重点をおいた診療も行っております。


4.膵実質温存手術(regional pancreatectomy)
 膵臓癌では、癌組織を残さない手術を目指して癌周囲の組織を広く切除しますが、一方、良性や低悪性度の腫瘍では、膵臓実質をできるだけ温存し、患者さんの術後QOL の維持を目指す膵実質温存手術(regionalpancreatectomy)を行います(Hirota et al. Am JSurg 2008)。特に、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は、近年発癌母地としての病態の理解が深まり、手術の機会が増えています。膵鈎部と膵体尾部に発生したIPMN に対して、膵頭下部+脾動静脈温存膵体尾部切除といった膵機能温存手術(Hirota et al. J MinimInvasive Surg Sci 2013)が可能となります。

ヘルニア外科

特徴

 鼠径ヘルニアは、腹部と下肢の境界付近の腹壁のやや脆弱な部分から、腹腔内の脂肪や腸管、膀胱などが筋層内や皮下に脱出する状態です。局所の痛み、不快感が主な症状ですが、腸管が脱出して、ヘルニア内にはまり込む“嵌頓(かんとん)” という状態になりますと、緊急処置や手術が必要になります。“病気” というよりも体の構造の“歪み” のようなものであり、内服薬や装具での根治方法はないため、手術が唯一の治療法です。脆弱になっているヘルニアの出口部分(ヘルニア門)の補強手術を行いますが、近年の標準手術は人工補強材(ポリプロピレン製などのメッシュ)を用いて補強を行う方法です。さらに、鼠径部に直接アプローチする前方切開法と、鼠径部から離れたところからアプローチする腹腔鏡下手術に大別されます。
 前方アプローチ手術は鼠径部に4から5cm 程度の皮膚切開を行い、メッシュを用いて補強を行う方法です。従来からある方法で、全身麻酔を必要とせず、脊椎麻酔、局所麻酔で手術が可能であるため、呼吸器疾患、循環器疾患などをお持ちの方でも行える方法です。
 腹腔鏡下手術は近年行われるようになった方法であり、腹部に0.5から1.2cm 程度の傷を3ヵ所あけ、腹腔内あるいは腹壁内からの操作にて、メッシュを用いてヘルニアを修復する方法です。全身麻酔を要する、手術時間がやや長いなどのデメリットがありますが、傷が小さい分、術後の疼痛が少ないというメリットがあり、当院では積極的に腹腔鏡手術を行なっています。
 患者さんそれぞれに安全で適切な手術方法を提案させて頂いております。その他、関連疾患として、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなどがあり、これらのヘルニアに対しても手術を行なっています。

取り扱う疾患

内・外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニア

手術症例数

2023年の手術症例数は122例で、内訳は以下の通りです。
前方アプローチ手術(主にdirect Kugel 法):107例
腹腔鏡下手術(TAPP 法 および TEP 法):15例

呼吸器外科

 肺癌は近年増加傾向にある疾患であり、検診や各種画像診断の向上により早期肺癌が発見されることが増加しています。肺癌の標準治療は肺葉切除+縦隔リンパ節郭清であり、近年は胸腔鏡下に手術を行うことが一般的となっております。また、大腸癌による転移性肺腫瘍(肺転移)に対しては、根治が可能な症例に関しては、積極的な切除が推奨されています。これら肺悪性悪性腫瘍と診断された場合には、熊本大学呼吸器外科に紹介し、手術の依頼を行っております。
 また、良性疾患として、自然気胸と呼ばれる疾患があります。若い、痩せた男性に多い疾患で、肺にブラと呼ばれる袋が形成され、何らかの理由でブラが破けて、肺が縮まる緊急性のある疾患です。根治的には手術が必要で、当院にて手術は可能です。腹腔鏡下ブラ切除を行い、胸腔ドレーンは早期に抜去する方針としています。短期入院での治療が可能であり、術後2~5日程度で退院可能であり

乳腺外科

 乳がんは近年増加傾向にあり、女性の罹患数は1位となっています。一方、死亡率は決して高いわけではなく、全がん死亡率中5位となっています。リンパ節転移のない2cm 以下の乳がんでは10年生存率は99%以上であり、リンパ節転移があっても転移個数が数個と多くなければ、適切な治療を受けることで80%以上の方に10年生存が望めます。
 “乳がん” と一括りに語られることが多いですが、実は遺伝子背景やホルモン感受性の有無などからいくつかのサブタイプに分類されます。これらのサブタイプごとに適切な治療を選択していくことで高い治癒率、病勢制御率を望むことが出来ます。このため、進行度とサブタイプ毎に治療法が異なっており、専門医と相談しながら治療法を決定していく必要があります。
 当院では手術療法を中心に、検診後の精密検査や術後の補助療法、再発後の治療などの乳がんの治療を行っています。手術治療には大きく分けて乳房を残す温存手術と乳房をすべて切除する乳房全摘除術があります。また、腋窩リンパ節に対しては術中に迅速病理検査を行う、センチネルリンパ節生検を行い、リンパ節転移陽性の場合にだけリンパ節郭清を行うことを基本治療としています。検査結果が出るのに30分程度かかりますが、乳房手術と同時に施行でき、根治性を担保しつつ手術の負担軽減を図っております。

スタッフ紹介

  • 杉田 裕樹
    外科
    杉田 裕樹 (すぎた ひろき)
    役職 院長
    卒業年度 昭和63年卒
    外来診察日 木曜日
    セカンド・オピニオン外来 月曜日(予約制)
    資格等
    • 消化器外科・肝胆膵外科
    • 内視鏡外科・一般外科
    • 日本外科学会(認定医・専門医・指導医)
    • 日本消化器外科学会(専門医・指導医)
    • 日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)
    • Fellow of American College of Surgeons(FACS)

     

  • 新田 英利
    外科
    新田 英利 (にった ひでとし)
    役職 外科部長
    卒業年度 平成13年卒
    外来診察日 金曜日
    資格等
    • 消化器外科・肝胆膵外科
    • 日本外科学会(専門医・指導医)
    • 日本消化器外科学会(専門医・指導医)
    • 日本消化器病学会(専門医)
    • 日本肝胆膵学会(高度技能専門医・評議員)
    • 日本内視鏡外科学会(技術認定医(肝臓))
    • 日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)
    • Fellow of American College of Surgeons (FACS)
  • 美馬 浩介
    外科
    美馬 浩介 (みま こうすけ)
    役職 消化器外科部長
    卒業年度 平成17年卒
    外来診察日 火曜日
    資格等
    • 消化器外科・肝胆膵外科
    • 日本外科学会(専門医)
    • 日本消化器外科学会(専門医・指導医・評議員)
    • 日本消化器病学会(専門医)
    • 日本肝臓学会(専門医)
    • 日本消化管学会(専門医)
    • 日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)
    • Fellow of American College of Surgeons(FACS)

     

  • 梅﨑 直紀
    外科
    梅﨑 直紀 (うめざき なおき)
    役職 医員
    卒業年度 平成23年卒
    外来診察日 月曜日
    資格等
    • 消化器外科・肝胆膵外科
    • 日本外科学会(専門医)
    • 日本消化器外科学会(認定医・専門医)
    • 日本消化器病学会(専門医)
    • 日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)
    • 臨床研修指導医
  • 森永 剛司
    外科
    森永 剛司 (もりなが たけし)
    役職 医員
    卒業年度 平成26年卒
    外来診察日 水曜日
    資格等
    • 一般外科
    • 日本外科学会(専門医)
    • 日本消化器外科学会(専門医)
    • 日本消化器病学会(専門医)
    • 日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)
  • 上村 将太
    外科
    上村 将太 (うえむら しょうた)
    役職 医員
    卒業年度 令和2年卒
    外来診察日 木曜日(午前中)
    資格等
    • 一般外科
  • 日髙 香織
    外科
    日髙 香織 (ひだか かおり)
    役職 非常勤医師
    卒業年度 平成27年卒
    外来診察日 木曜日
    資格等
    • 乳腺・内分泌外科
    • 日本乳がん検診精度管理中央機構(検診マンモグラフィ読影認定医)
  • 有田 哲正
    外科
    有田 哲正 (ありた てつまさ)
    役職 非常勤医師
    卒業年度 昭和52年卒
    外来診察日 金曜日
    資格等
    • 消化器外科
    • 一般外科
    • 日本消化器外科学会(認定医)
  • 廣田 昌彦
    外科
    廣田 昌彦 (ひろた まさひこ)
    役職 非常勤医師
    卒業年度 昭和58年卒
    外来診察日 月曜日(第2・4週)
    資格等
    • 消化器外科
    • 肝胆膵外科
文字サイズ