『患者さんと共にある看護を実践する』
~やさしさと思いやりをもって、必要とされていることを必要な時に提供する~
新型コロナウィルス感染症が5類感染症に移行し1年が経過しました。緊急事態宣言による行動制限や入院勧告などの対応から「コロナとの共生」の時代に入りました。この4年間、病院も看護部も幾度となく危機的状態に陥りました。しかし、各職員が常に病院理念に基づいた判断と行動で、大きな危機を乗り越えることができました。その間のマネジメントは大きな学びであり、これからも、あらゆる課題に活用していけると思っています。
今年度は、看護部目標を二点あげました。一点目は、昨年に引き続き「チームの目的に向かい協働し、最高のパフォーマンス(看護の専門性)を発揮する」です。医師の働き方改革が進む中、多職種協働や業務の効率化を更に進めていく予定です。協働とは、同じ目的のために共に働き成果を出すことです。当院には、病院理念に3つのよかった「かかってよかった。紹介してよかった。働いてよかった。」があります。最高のパフォーマンスとは、3つの「よかった」に対しての課題解決や、これまでの取り組みのさらに高みを目指すなど委員会、各看護単位、各チーム、個人が限りある時間の中で協働し成果につながるように余力管理(時間管理)をすることを意味しています。認知症、フレイルの高齢患者さんの入院が増え、転倒予防や要介護状態の生活支援は年々増えています。このような中で看護の専門性を発揮するとは、看護師が優先度の高い業務に専念し、意思決定支援や医学管理に集中してケアにあたれるように、チーム活動や協働を促進させ業務の効率化をめざします。また、業務の効率化として、看護部の「4本の矢」の取り組みのひとつである「ポリバレントナース」の育成を強化します。入院病棟の応援スキルを持つポリバレントナースと特殊部署のスキルを持つナース(手術室や外来など)の2パターンの育成に取り組んでいきます。特に、当院の役割である、休日夜間急患センターの繁忙期や業務過多に対応できるように、必要なスキルや業務をさらに可視化し、計画的に教育の機会を設け輩出していく予定です。
次に「ひとり一人がワークエンゲージメントを高められる職場にする」では、あるべき姿は「一人ひとりがonとoffをしっかりつけ、やりたい看護を実現させ活き活き働き続けられる職場づくり」です。今年度、「患者のそばにいる看護」について各部署の取り組みの報告会の開催や夜間交代勤務の負担軽減、目標管理において、師長は面接時間の確保と進捗管理を行い、各スタッフが描くロードマップの目ざす看護師像を支援していく予定です。また、新人看護師を迎え入れ各看護単位でチームの一体感を生みだすために、各部署の個性を出しながらいろいろな取り組みがスタートしました。
多様化する看護ニーズや24時間体制の勤務に対応していくためには、人材確保と定着、人材育成が重要です。
本年度も、「3つのよかった」の実践に取り組んで参ります。
地域医療連携室看護師は、入退院支援担当者として入院前から退院まで、必要なケアや支援を病棟看護支援連携し、安心して入院療養が遅れるよう取り組んでいます。また、紹介くださる医師会会員の先生方や外部医療機関等からの患者紹介・相談の窓口なり、困りごとに対し状況を確認し迅速に対応できるよう努めております。お困りの際は、どうぞご相談ください。
当院外来は、紹介型外来、外来がん化学療法、熊本市の委託事業である休日夜間急患センターなど多様な役割を持ち、受診される患者さん、そして地域の先生方の「よかった」を目指しています。新型コロナウイルス感染症が5類へ移行し、前年度の年末年始における休日夜間急患センターは、制限なく受け入れる本来の姿へと戻りました。期間中1,881名の患者さんを受け入れ、待ち時間案内と診察順をお知らせするシステムの導入は、外部の先生方からも高く評価されました。今後も休日夜間急患センターの役割発揮に努め、一人でも多くの患者さんを受け入れていきます。また、高齢化が進む中、入院前から始まる患者支援(PFM)の取り組みが重視されています。前年度より新たに配置された地域医療連携室師長と共に、多職種協働と連携によりPFM を強化し、更なる「かかってよかった。紹介してよかった。」に努め、地域貢献して参ります。
検査部は、「歩いてきた患者さんは歩いて帰す」をモットーに、安全で精度の高い診断につながる検査提供を目指しています。検査室に所属する看護師は、日進月歩進化する検査方法や治療に対峙できるよう、専門的知識と技術の習得に取り組んでいます。近年放射線部門では、最新の医療機器(CT・MRI・血管造影装置など)が導入され、多岐に渡るIVR が実施されています。また、県下トップクラスを誇る内視鏡部門では、専門医の活躍により、より低侵襲なEMR・ESD を提供しております。透視下で行う内視鏡治療においても、新たな透視装置を導入し、他院では対応できない難易度の高い治療が行われています。
安心・安全で精度の高い検査を提供するためには、チーム医療が不可欠です。検査に特化した看護単位を有する当院だからこそ、検査看護の専門性を発揮し、医師・技師・看護師による三位一体のチーム医療の実現に取り組んで参ります。
本館3階北病棟は、41床(3階フロア35床+救急病床6床)の急性期病棟です。呼吸器内科、消化器内科を主に、精査や治療を受けられる方々が多くを占めています。個室を11室保有していることから、緊急入院や重症度の高い患者さんに即応でき、HCU のバックベッドとしての機能も担っています。また、急性期の検査や治療を終え、速やかに元の生活が営めるように多職種と協働しながらチ-ム医療と退院支援に取り組んでいます。患者さんやご家族に「かかってよかった」と思っていただけるよう安心・安全な看護を提供していきます。
本館3階南病棟は、3階フロアに27床と、4階フロアに21床のサテライト病棟を持つ48床の急性期病棟です。主に、消化器内科、呼吸器内科、糖尿病代謝内科の患者さんが入院されています。消化器疾患に対する内視鏡検査や治療、また消化器、呼吸器がんの抗がん化学療法が多く行われています。検査や治療目的での短期間入院の患者さんも多いため、限られた期間の中で安全な医療・看護を提供し、安心して元の生活に戻っていただけるようスタッフ皆で取り組んでいます。
小児病棟は、当院の役割である熊本市休日夜間センター、小児救急拠点病院として、入院加療を必要とする小児を年間1572名(2023年度)受け入れています。また、食物アレルギー負荷試験目的の入院患児は2023年度が最多で616名でした。
入院患児の殆どが、かかりつけの先生方からのご紹介、もしくは休日夜間の緊急入院です。当病棟の役割として、昼夜を問わず、できるだけスムーズに入院患児を受け入れることができるようスタンバイしています。急な入院を余儀なくされて不安な患児やご家族が、安心して過ごしていただけるよう取り組んでいきたいと考えています。
緩和ケア病棟は2001年に開設し、現在14床で稼働しています。当院の緩和ケア病棟は、症状コントロールを行い、落ち着いたら退院して自宅で過ごすという在宅支援に力を入れています。がんの進行によって生じる体のつらさや気持ちのつらさを和らげられるように、多職種との協働や看護師の緩和ケアに対する技術の向上に努めています。また、緩和ケア相談外来では、その時々の体調に適した生活の場を一緒に考えていきます。今後も、緩和ケア病棟の利用に柔軟に対応していきたいと考えています。
本館5階北病棟は病床数37床、周手術期の患者さんを担当しています。術前より、理学療法士や薬剤師、栄養士など多職種で協働し、手術を受ける患者さんが安心して治療が受けられるように支援しています。
当病棟には、外科術後病棟管理領域の特定行為研修修了者が2名勤務しています。術後患者さんのタイムリーなケアの提供を目的に2023年度より活動をしています。現在、手順書に基づいて創傷管理やドレーン管理をしていますが、今年度は術後疼痛管理チームに参加し、患者さんの苦痛の緩和を目指していきます。
当院の地域包括ケア病棟の呼称は、「回復支援病棟」です。急性期治療を経て病状が安定した患者さんの、安心して元の生活に戻るためのADL 回復や医学管理の習得、療養場所の選定における意思決定支援を行っています。また、自宅や介護施設等からの緊急時受け入れにも対応しています。
近年、医学管理の必要な高齢者が増え、家族を含めた様々な課題を地域に繋ぐために多職種との協働を強化しています。ご紹介頂いた医療機関や施設及び患者さんやご家族に、「かかってよかった」と思って頂けるよう取り組んでいます。
新館5階は、病床数26床の急性期病棟です。主に、消化器外科の周術期の患者さん、循環器内科の患者さんを多く受け入れています。さらにHCU からの転入や緊急入院が多いことが特徴です。そのため、周術期ケア、循環器ケアにおける確実なスキルを習得し、丁寧な看護実践を行うことを目指し、チームで取り組んでいます。また、多職種と協働しながら、患者さんの回復を促し、住み慣れた場所へ安心して戻っていただけることを大切にしています。
HCU には、侵襲の高い全身麻酔手術後の患者さんや、心不全、呼吸不全などの患者さんが入室されます。さらに、当院の診療科すべての重症患者さんを対象としており、人工呼吸器管理、周術期管理、血液透析管理などの、高度急性期ケアを提供しています。そのため、HCU 看護師は、確実で安全な医学管理が実践できるようスキルアップに励んでいます。患者さんの重篤化を予防し、早期回復に向け、常に多職種と協働しながら質の高い医療・看護が提供できるよう取り組んでいます。
当院の手術は、消化器外科が大半を占め、その大半が鏡視下手術です。年々特殊な器械の取り扱いも増え、臨床工学技士とも協働し安全に手術が終了するように努めています。2024年3月術中麻酔管理領域パッケージ特定看護師研修を修了した看護師1名在籍しており、シームレスで質の高い医療が提供できるように麻酔科と連携しています。また、手術室看護師は手術室だけに留まらず、患者さんが「この病院で手術してよかった」と思っていただけるように、術前術後を通した周術期看護を提供しています。
1994(平成6)年より、キャリア開発ツールを用いて看護師個々の看護実践能力を高める教育体制を構築しています。以下に示す「看護部教育指針」のもと「看護師教育のリソース」が中心となり、「組織が求める看護師」の育成に取り組んでいます。患者さんをトータルにとらえ、退院後の生活の場までも思いを馳せた看護ができるように、教育プログラムの充実、業務改善に努めてまいります。また、コンパクトサイズの病院だからこそできる「いつでもどこでも組織のリソースになることができる」ポリバレントナースの育成に努めます。
スキルを学ぶ・スキルを使う・スキルを伝える
あなたでよかったと思える看護師
1.看護部運営委員会
看護部運営委員会は、それぞれが持っているスキルを伝え、スキルを使って看護部の将来像の実現、組織が求める看護師の育成に向けた、教育プログラムの企画・運営をしています(図3)。
図3 看護部運営委員会(看護部会議・委員会・研修会組織図)
2.キャリア開発ツールとキャリアマップ
日本看護協会のクリニカルラダー、マネジメントラダーを基盤に、キャリア開発ツールを作成しています(表2)。このツールを用いて、現在の自身の看護実践能力を把握し、個々が描いている看護師としての将来像の達成に向けて、個人目標管理を行っています。個々の看護師が将来像を描きやすくするために、キャリアマップも作成しました(図4)。
3.認定看護管理者
日本看護協会の資格認定制度の一つである「認定看護管理者」は、現在2名ですが、認定看護管理者になるための教育課程修了者は、ファーストレベル21名、セカンドレベル6名、サードレベル1名です。教育課程で修得した管理的視点を用いて、マネジメントスキルの向上に関する教育プログラムの企画・運営ならびに、病院組織のなかで医療・看護の質向上を目指し活躍しています。
4.認定看護師
それぞれの分野の専門知識を駆使し、看護師の実践能力の向上に関する教育プログラムの企画・運営を担っています。患者さんに提供するケアの質の向上はもとより、看護学生の教育にも携わっています。
褥瘡などの創傷管理やストーマ・失禁などの排泄管理、患者家族の自己管理及びセルフケア支援を行っています。デリケートな領域に関わることが多く、患者さんの不安や問題に一緒に向き合うことを大切にしながら、専門的知識と技術を患者さんの社会復帰に結び付けられるよう実践しています。患者さんへのケア・指導も行っています。今後も看護師個々の実践力向上へ向けて、活動の幅を広げていきたいと考えています。
私は現在、外来に勤務していますが、緩和ケアはがん患者さんだけではなく、循環器や呼吸器など様々な疾患において早期からの介入や意思決定支援が必要と考えます。患者さんとご家族を全人的に捉え、その人らしさを支えるケアを多職種で連携し支援していきたいと考えています。また、チーム活動や患者さんへのケアを通して専門性を持った知識と技術、リソースとして活動の幅を広げることで看護の質の向上につながるよう取り組んで参ります。
患者さん、ご家族はがんと診断されてから治療方法や療養場所など様々な意思決定が必要になってきます。そのたびに不安や心配がでてくることもあるかもしれません。そんなとき、緩和ケア認定看護師は、患者さんやご家族に寄り添い、その方々がこれまで生きてきた過程、価値観を大事にしながら他職種とともに意思決定を支えていきたいと考えています。今後は院内のがん看護の質向上、地域とも連携しながら早期からの緩和ケアに取り組んでいきたいと思います。
慢性心不全の病態や治療は複雑化・多様化しており、その管理は長期にわたります。患者さん自身が治療計画に参加し身体症状の理解を深め、医療資源や社会資源を上手に活用しながら、生活を調整していく必要があります。このような患者さんの病状や病期に応じた症状モニタリングとアセスメント、自己管理能力を高める支援や心理的支援を専門的に行うことを使命としています。入院中、通院中の患者さん共に安楽に在宅での生活が送れるよう看護介入を行っていきたいと思います。
私は2016 年救急看護認定看護師として資格を取得しました。救急外来は患者さんやご家族と接する時間が短く、情報の少ない患者さんをフィジカルアセスメントで判断するため、これまで学んだ知識やスキルを使い短い時間で行動へ移さなくてはなりません。救急患者さんは時と場所を選ばず発生し、対象はあらゆるライフステージの患者さんとそのご家族です。そのために、学習を継続し、チーム力向上に努めたいと考えています。災害看護では実際に熊本地震を経験しました。災害はそれぞれの時期での対策や看護が傷病者の予後に影響します。地域における救急医療と災害医療の体制づくりに貢献していきたいと思います。
認知症看護認定看護師は、脳の障害によって生活がしづらくなった人の日常的な意思決定支援や、生活行動を支える役割があります。認知症の発症から終末期まで、高齢者の心身の状態を含めて統合的にアセスメントし、適時・適切なケアを提供していきます。また、介護家族を含めてケアをする上での困りごとやせん妄予防に取り組みます。認知症者の「人」としての尊厳を守り、ケアのプロセスをふみながら、認知症ケアの質向上に皆さんと取り組んでいきたいと思います。
認知機能の低下がある方は環境の変化に敏感です。また、慣れない環境で生じる困りごとを自ら訴えることが難しい方もいらっしゃいます。そのような患者さんの治療・ケアに対する戸惑いや不安に気づき、せん妄や行動・心理症状の出現の予防や緩和が図れるよう日々努めています。患者さんから見ると我々も環境の一部です。患者さん自身が、周囲から受け入れられ尊重されていると実感できるような関りを大切にし、安心して治療を受けて頂けるよう、当院の認知症看護の実践力の向上に向けてスタッフと一緒に取り組んでまいりたいと思います。
感染管理認定看護師は、自らの足と目で現場の問題を発見し、現場のスタッフと共に解決していく役割があります。また、病院に関わる全ての人たちを感染から守るために活動(教育・指導)しています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験し、地域の医療機関との連携が重要であると学びました。今後は、院内のみならず地域の感染対策の質の向上を目指して活動していきたいと思います。感染に関する相談がありましたら、お気軽に声を掛けてください。
感染管理認定看護師として、病院内における感染対策の状況や問題点の把握を行い、改善への介入など、日々病院全体を駆け回っています。入院や通院の患者さんだけではなく、病院を訪れる来院者、病院スタッフも含めて感染の脅威から守ることが感染管理認定看護師の役割の一つです。今後は病院内だけではなく、地域の感染対策への活動も行っていきたいと考えていますので、宜しくお願いいたします。
2016 年より当院では、看護師の実践能力向上を目的として、認定看護師によるステップアップ研修を院内職員向けに開催しています。2022 年度からは、院外の方へステップアップ研修を公開し開催しています。今後は、地域医療機関・訪問看護ステーション・介護施設の皆様と連携を強化していきたいと考えています。当センターには、6 分野9 名の認定看護師が在籍しています。認定看護師による地域の医療機関・訪問看護ステーション・介護施設に勤務する医療従事者の相談窓口を開設しています。皆様の相談を通して、地域と繋がり地域連携がより一層推進されるよう努めていきたいと思います。
対象 / 医療機関・訪問看護ステーション・介護施設等に勤務する医療従事者の方
相談方法 / メールで直接相談 nintei.ns@krmc.or.jp
問い合わせ先 / 熊本地域医療センター 認定看護師協議会 担当 長尾 美鈴 TEL:096-363-3311(代表)
「看護業務の効率化先進事例アワード2019」は厚生労働省の看護業務効率化先進事例集・周知事業として日本看護協会が受託したものです。看護業務の効率化に関する優れた効果・成果を上げている事例や、それにより医療・看護ケアサービスの充実や実現した事例の募集がありました。当院は、「ユニフォーム2色制」「ポリバレントナースの育成」による持続可能な残業削減への取り組みと題してエントリーをした結果、最優秀賞を受賞しました。受賞後3本の矢の強靭化に向けて取り組んできました。
2022年度より4本目の矢として「業務の可視化と業務シャッフル」を追加して更なる強靭化をめざしています。
【商標登録】
商標原簿に登録されました
「ポリバレントナース育成システム」 登録日 令和2年8月13日(登録第6279824号)
「ユニフォーム2色制看護提供方式」 登録日 令和2年10月16日(登録第6304719号)
「看護業務の効率化先進事例アワード2019」取組の動画はこちら
『熊本地域医療センター看護部』のLINE公式アカウントが完成しました!
ぜひ登録をお願いします!