当院について

熊本地域医療センターだより

シリーズ企画「友達の輪~Relayトーク」第26弾

清藤 千景
清藤クリニック
清藤 千景 先生

 熊本市北区武蔵ケ丘で、内科一般の診療と在宅医療のクリニックを開業して10年になります清藤千景と申します。私と熊本地域医療センターとの関わりは大きく二つです。
 ひとつめは、「休日夜間急患センター」です。何度か協力をさせていただきましたが、診療をしながら、亡父を思い出していました。出不精で喘息もあり、自宅や職場に引きこもり仕事や読書に没頭する毎日を送っていた亡父が、ある時期から定期的にタクシーで出かけるようになったことが記憶に残っています。行き先は「医師会病院」でした。今は私が同じ役割を果たしていることを、患者様の診察をしながら感慨深く思いました。地元とは患者層も異なり、慣れない場所で、緊張の連続でしたが、外来の看護師さんは優しくサポートして下さりながらも機敏に動かれて、頼もしかったです。きっと亡父も同じように感じていたと思います。
 ふたつめは、「緩和ケア」「在宅医療」です。過去に、癌末期の患者様の在宅医療を依頼いただきましたが、特に印象深かったのが、大腸癌末期70代男性です。退院前カンファレンスが開催され、退院後から訪問診療、訪問看護などが始まり在宅医療開始となりました。無口で無愛想な方でしたが、「釣好き」と直に分かりました。居室には魚の写真や魚拓がずらっと並び、釣竿が置いてあったからです。二回目の診察の時、「弟が近々釣りに連れて行ってくれます」と奥様から教えていただき、以前に家族で釣りをした時、奥様が偶然85cmの 大きな鯛を釣り上げて大変だったという話で盛り上がりました。その時、ご本人様がとても良い表情でしたので「記念写真」を提案し、私のスマホで撮影したことが思い出です。というのも、その数日後、急な腹痛で熊本地域医療センターへ緊急搬送となり亡くなられたからです。それから何年も経過して、娘様にお目にかかる機会があり「あの写真はいつも持っています。写真のおかげで救われました」と有難い言葉をいただきました。何気なく撮った一枚の写真が、ご遺族の救いになるなんて!貴重なご縁を繋いで下さったこと、急な体調悪化時に受け入れて下さったこと、地域連携室の相談員様、主治医の安部先生には心から感謝しています。
 今は個人的な事情で、「休日夜間急患センター」の協力は行っておりませんが、引き続き「緩和ケア」「在宅医療」の面で、熊本地域医療センターを外から支え、地域の方々が安心して笑顔で過ごせるお手伝いができたらと考えています。これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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